クライアントの不正はクライアントに訊け

前の話からちょっと続きます。


民間団体である日本将棋連盟に警察のような捜査権がないのと同様、会計士も強制力を伴う捜査権はありません。

一応クライアントとの関係では、会計士が求めた資料は全て出すことになっています。

と言うのも、クライアントと契約を結ぶ際、「リクエストした資料は全部出してね」という一筆を契約書に入れておくから。

法律でも何でもありません。非常にかる〜〜い取り決め。強制的に取りにいくこともできなければ、出さなくても罪に問われることもありません。

ではクライアントが非協力的でなかなか資料が出ないときはどうするのか?

得てしてそういう資料には会計士に知られたくないことが書かれています。

粘り強く待つか、相当リスクの高い案件であれば、監査人を辞任するしかないでしょうね。

ただ向こうも監査レポートは欲しい。

一方、こちらは調べかけたものを中途半端にして、監査レポートを出すことはない。

となると狙いは時間切れ。監査レポート提出期限のギリギリに資料を出してきて、チェックの時間を短くしてきます。

勿論こちらもそれに備えて昼間は体力を温存し、資料が出た夜から明け方にかけての検証に備えますけどね。

会計士は不正をどうやって見つけるのか?

ある日監査のためにクライアントを訪問すると、内部監査の担当者に、

「先生、ちょっとこっちこっち」

と別の階に呼び出されました。

「次来るのいつですか?」

「月末に最終の確認のためにもう一回来ます。」

「そしたらいついつに開催されるこれこれの議事録を読んでください。そこに今回見つかった不正の顛末が書いてありますから。」

(絶句…)

クライアントの中にも不正を明らかにしてほしいという人が一定数います。

いや、実際にはそういう人がマジョリティーなんでしょうね。

日本人は「会社のため」に自分の得にならない不正に手を染める厄介な人種ですが、自ら進んで不正をしたいという人はいないでしょう。

ところが会社の中の人が声を上げても、組織の理論にかき消されるだけ。

ならば最後の頼みとして、外部の会計士に何とかしてもらおうとするのです。

「3月34日(注)に入る仕訳は小さなものでもきっちりチェックした方がいいですよ。」

と言い残して退職した人もいます。

(注)4月3日のこと。つまり決算日直後。


その人は会計士に失望していたのかもしれません。

「この先生やったらええようにやってくれはる」

という信頼を掴んでからが、会計士の真骨頂です。

私の場合、クライアントの経理部にダマテンで営業部と直接やり取りし、土壇場で在庫評価減を求めたのが内部監査人の目に止まったのでしょう。

経理部の人にはしばらく目を付けられましたけどね。

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