香港で初めて担当した会社の決算書が不適正意見を食らう

香港の会計事務所では日系企業部に所属していたので、監査はほとんどせず、もっぱら数十社の日系クライアントに対するコンサルティングが私の主な業務でした。

クライアントのほとんどは監査クライアントでもあったので、それぞれローカルの監査担当マネージャーがいて、彼または彼女が現場を取り仕切ります。

初めての不適正意見

私が香港に赴任して間もない頃、なかなか監査が完了しないクライアントがありました。

クライアントの親会社は日本の非上場企業なので、それほど急かしはされませんでしたが、急がないとすぐに税務申告期限が来てしまいます。

香港の税務申告期限は決算期ごとに三つのグループに分けられています。

そのクライアントの場合、決算日から約8ヶ月後までに申告書を提出する必要がありました。

日本と比べると悠長ですが、得てして人間は締切が近付かないと仕事をしないものです。

油断しているとあっという間に申告期限当日を迎えることになります。
 
担当してすぐのことだったので、急いで監査マネージャーをせっつきに行きました。

そこで彼が一言。「大丈夫大丈夫。間に合うよ。それにこの会社は不適正意見だから。」

えっ!

監査における不適正意見とは?

会計士は監査が終わると、経営者に向けてレポートを書きます。

「監査をした結果、この決算書は正しかったです」と言うのが『適正意見』

一方、「この決算書は間違ってますよ」というレポートを送りつけるのが『不適正意見』です。

そんなん貰っても困るわ、と思われるでしょうが、はい、これはかなりの緊急事態。

上場企業なら上場廃止の可能性が高く、監査法人としてもリスクが高いのでレポートを出す前に辞任してしまうことがあります。

監査報酬は取りっぱぐれますが、それでも辞めた方がマシということです。

会計士やるなら一度は見たい不適正意見。それを初っ端から引き当てるとは、なんて運が良い(悪い)んだ!

よくよく話を聞くと、その会社はミャンマーに子会社(日本から見ると孫会社)がありました。

にもかかわらず、ミャンマー会社の決算書を合算した連結財務諸表を作っていません。

国際会計基準(IFRS)にいち早く準拠した香港では、これはNG。

しかし、税務申告では香港会社の利益が分かれば足りるので、不適正意見だけれども申告上問題なし、という取扱いになります。

そのことを説明すると日本の親会社も納得してくれました。

国際会計基準が全て同じとは限らない

そこから年月は過ぎ、今度はマレーシアに子会社を持つシンガポールの会社に出会いました。

シンガポールも香港と同様、イギリスの旧植民地、かつ先進国としての制度を備えた地域です。

当然、国際会計基準を取り入れています。

ところがここシンガポールでは連結財務諸表を作っていなくても不適正意見にはならないのです。

シンガポール・スペシャルとでも言うべき取扱いがあり、一定の条件を満たすと不適正意見を外せます。

「国際会計基準を採用する国はどこでも同じルールで決算書が作られます。日本も早く参加しましょう!」

国際会計基準推進派の売り文句ですが、私は全く信用していません。

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