バニラ・エア問題との比較〜段差があるだけで訴えられるアメリカ

バニラ・エアが車椅子の乗客にタラップを這い上がらせたとされる問題、この乗客がいわゆる「プロ」の障害者だったこともあって、賛否両論盛り上がりを見せています。


正確な事情は想像の域を出ませんが、障害者を非難する人の言い分としては、「ルールに基づいて事前連絡をしなかった」点をとがめていますし、一方障害者を擁護する人は、「もし事前連絡をしていたらバニラ・エアが搭乗を断っていた」点を問題視しています。

実は私もアメリカで、同様の「プロ」からクレームを受けたことがありました。しかも相手は弁護士。それも障害者関係の訴訟に特化し、業界ではゴロツキ呼ばわりされている弁護士です。

そのときの経験を踏まえると、私はバニラ・エアに非ありと考えています。「非がある」と言い切ってしまうとちょっと言葉がキツいですが、もうちょっと人に思いやりを掛けてもよかったのでは?と思ってしまうわけです。

しかしまずは私がアメリカで経験したクレームの紹介から始めたいと思います。

お店の前に段差があるだけで訴えられるアメリカ

私たちのお店はニューヨークで最も人通りの多いストリートの一つに面していました。

そのお店の前には15センチほどの段差がありました。ニューヨークは案外古い街で、お店の入った建物は歴史的建物に指定されています。歴史的建物は気軽に改造することができないので、その当時は特に気にもせず、段差を放置したまま営業していました。

ある日会社の顧問弁護士から、訴状を受け取ったという報せがありました。車椅子で入店しようとしたお客さんが、お店に入れず精神的苦痛を負ったという訴えです。

訴額は1000ドル。「あれ、安いな?」と思いましたが、訴訟に負けると訴額+相手方の弁護士費用が請求されます。その弁護士費用が数万ドル。「やられた!」と思いました。

細かい経緯は忘れましたが、お店の設計上は法律の要件をクリアーしていたと思います。ただこの種の訴訟はこちらが不利。下手に時間をかけると弁護士費用がかさむので、さっさと示談に持ち込んで相手の言い値を支払ってしまった方が傷口が浅くて済みます。このケースでも示談を選択し、数万ドルを支払いました。

余談になりますが、アメリカで会社を経営する者として、当然訴訟保険には入っていました。しかし保険でカバーされるのは訴額の1000ドルのみ。相手方の弁護士費用数万ドルは丸々支払いましたよ。ただこちら側の弁護士費用、これも数万ドルかかりましたが、これは保険で求償できました。

高い授業料だったが、、、

お店の前の段差ですが、残念ながらスロープを付けるほどのスペースはなく、根本的な解決はできないことが分かりました。そもそもそれはテナントではなくランドロードの責任ですしね。

考えた末の解決策は至ってシンプル。車椅子のマークをお店の前に掲げ、インターフォンを付けて「車椅子の方は呼び鈴を押してください。スタッフがお手伝いに参ります。」と表示しただけです。かかったお金は数十ドル程度だったと思います。

インターフォンを付けて間もなく、お店のスタッフから報告がありました。ある車椅子のお客さんが来店され「今まで入店を諦めていたが、表の案内を見て入ってみる気になった」とのこと。

この話を聞いて思いました。今まで障害者のお客さんがいるということをちゃんと考えたことがなかったな、しかもたった数十ドル掛けただけで、そういったお客さんから感謝してもらうことができた。

ゴロツキ弁護士に感謝する気はさらさらありませんが、これがきっかけで障害者対応について考えるようになったことも事実です。

バニラ・エアの問題は「そもそも障害者対応をしようとすら考えていなかったのではないか?」ということ。これもあくまで推測でしかありませんが、これがきっかけでどんな人にも思いやりを掛けられるようになったんなら、結果として良かったんじゃないかなと思います。

障害者対応は意外とお金はかかりませんよ。それよりもまず、障害を持った人のことをちょっと考えてみるということが大切です。

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